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転校体験談と、生徒を支える教員たちの熱き思い。一歩踏み出せば、新しい可能性が見えてくる

高校生にとって、転校・編入はリスタートのチャンス。転校を決意した生徒と、その生徒を支える教員の思いを聞いた。

◆転校(転入)…高校に在学している生徒が、引き続き他の高校の相当学年に入学すること。

◆編入…種類の異なる学校からの入学、外国からの帰国者などが、第1学年当初の入学時以外の時期に高校に入学すること。(一度学校「を辞めた状態で入り直すこと)

目次

面談で、生徒の不安を払拭する

京都府と隣接する、兵庫県豊岡市に立地する豊岡キャンパスは、少人数でアットホーム。豊岡駅から徒歩2分と、立地の良さが自慢だ。キャンパス長を務める安田五武(やすだいつむ)先生は、同キャンパスが開校した22年前から勤務するベテランだ。

「キャンパス開校当時は、クラーク国際が通信制でありながら通学制度を設けた走りの時期でしたね」(安田先生)。
2021年から導入された、「進路指導主事制度」により、全国から13人の教員が「進路指導主事」に任命されたが、安田先生はその1人。毎年、30人ほどの転入生を面談している。
「転入生の中には、最初の面談で下を向いて目を合わせようとしない生徒もいます 。でもこちらが、『よう来たな、うちでフォローしてやるからな』という気持ちで話すと、だんだん表情が明るくなってきます。本校には通信制ならではの柔軟なシステムがありますから、生徒の不安を払拭するような提案をするよう心がけています」

マイナスのエネルギーをプラスに向けていく

豊岡キャンパスには3日と5日の通学コースがあるが、授業は朝9時半から夕方の5時半まで、いつ登校しても下校してもいい「フレックス制度」を設けている。(※他キャンパスでは、スマートスタディコースというフレックススタイルのコースを設置していることが多い)

「豊岡市は大きな街ではありませんから、朝の通学電車で前の学校の生徒と顔を合わせることもあり、精神的なプレッシャーが大きい。起立性調節障害を抱えて朝起きられない生徒もいるため、朝一律の時間に授業を始めるのは難しいのです」

転入でクラーク国際に来る生徒の中には、SNSなどで突然攻撃されて集団からはじかれるなど、人間関係のトラブルが原因で登校できなくなるケースもある 。

優しくて感受性が強い子ほど、耐えきれなくなることもある。社会に出れば、がまんしなければならないことは山ほどありますが、それはおいおい学んで行けばいい。今、立ちすくんで前に進めなくなっているのに、子どもたちは『なんで学校に来ないんだ』『テストの成績が悪い』『これでは卒業できない』と言われ続けてきた。保護者だって苦しんでいるんです。そこからは前向きな発想はできない。何々しなければならない、という義務をいったん置いて、負のエネルギーをプラスのエネルギーに変えていきたいと思っています」。
そのため声がけは、「よう学校に来たな」「課題をよくがんばってやったな」と、気持ちがプラスに向かうように、心がけているという。

1人ひとりの生徒をよく理解する

大切にしているのは生徒との対話だ。それにも、フレックス制度が活きてくる。時間差で登校してくるため、1人ひとりの生徒にじっくりと時間を掛けられるのだ。
「学力を上げることも大切なんですが、生徒が変わらない限り難しい。まずはその生徒を理解し、肯定感を高めてあげることが大切なんです」

朝の立哨を行う安田先生。生徒のバックグラウンドから趣味まで、対話を通して生徒を理解することを誰よりも大切にしている。

「誰だって自分のことをわかってほしいと思っている。我々教員は『いつもあなたのことを気に掛けているよ』というスタンスで臨んでいます」

小学校高学年から中学校まで、ほとんど学校に通えなかった生徒がクラーク国際に入学し、週1時間から初めて、現在は毎日キャンパスに通っている例もあるという。ある生徒は、中学時代に野球部で実績を上げ野球の名門高校に入学。途中で挫折し、クラーク国際に転入した。持ち前のやる気を発揮して大学に進学し、現在は市議会議員として活躍している。

「仕事だったらば転職はあたりまえですが、高校だとやはりまだ抵抗がある。でも、その学校で自分がこれ以上成長できないと感じたら 、縛られることはない。通信制ならばやれることがいろいろある。本校にも、前向きにがんばっている生徒がたくさんいますよ」(安田先生)

生徒の話にじっくり耳を傾ける

鹿児島キャンパスの川崎大輔(かわさきだいすけ)先生は、4年間神戸三宮キャンパスに勤務した後「自分の勉強のために、他の地域のキャンパスも経験したい」と、自ら転勤を希望した熱血漢だ。大阪生まれというキャラクターを存分に活かし「おもろいお兄ちゃん先生」と、生徒から慕われている。

鹿児島キャンパス初日に「僕はずっと関西弁を使うつもりやけど、鹿児島弁を使わせたら君らの勝ちや」と挨拶して、生徒のハートをつかんだ川崎先生。そんなハートフルな対応を見込まれ、広報担当として年に50件ほどの転入面談を任されている。

転校の原因の一つとして 、友達やクラブ活動での人間関係のつまずき、学校に対する不信があるという。

「面談のときには、まずじっくりと生徒の話に耳を傾けます。その後に『一緒にがんばろう』と話します」
「今まで気持ちを聞いてくれた人はいなかった」と号泣する生徒もおり、面談の後は晴れやかな笑顔になる。もちろんクラーク国際に来てくれるとうれしいが、「今の学校に残るとしても、別の学校に行くとしても応援しているからがんばってね」と、伝えている。

神戸のキャンパスで面談したある生徒は、結局元の学校に残ることになった。
「2年後、その彼から電話をもらったんです。『先生の励ましがあったから、高校を卒業し大学に進学できた。大学に行かしてくれてありがとうございました』と、言ってくれた。うれしかったですね」(川崎先生)

「失敗してもいいから、やってみよう」

大切にしているのが、転入学した後のフォローだ。こまめに「がんばってるね」「大丈夫か」と声をかけ、生徒の様子がいつもと違うと個別に面談する。

在校生の協力を仰ぎ、クラスに溶け込む仕掛けも抜かりない。
「事前に情報をキャッチして、趣味の合う生徒に声を掛けておきます。たとえばイラストが上手な転入生なら美術コースの生徒に、ゲームが好きならゲームが趣味の生徒に『声を掛けてあげて』と、頼んでおきます。面談をしている最中にも『この生徒なら、あの子と気が合いそうやな』と、頭の中で思い浮かべています」

同キャンパスには、心理学の基礎を学ぶ「ピアアシスタント」という授業があり、どのような声掛けをしたらいいか、どのように接したらいいか、生徒たちが学んでいるという。
「クラスには、前の学校になじめずクラーク国際に来た生徒もいる。だから、転入生の気持ちがよくわかるんです」
川崎先生がいつも口にするのは「失敗してもいいから、とりあえずやってみよう」という声掛けだ。先生が背中を押し、小さな成功体験を重ねることで、生徒は自信を取り戻していくという。

転入初日から、友達ができた

同キャンパスの総合進学コース3年の寺田さんも、そんな1人。2年次から転入した。地元の進学校に入学したものの、ハードな勉強についていけず学校に行くことができなくなった。先生から「このままだと進級できない」と言われ、1年次の単位はかろうじて取ったものの、それが限界だった。

「親が全日型を望んでいたので、クラーク国際を勧められました。見学した時に、生徒と先生の距離が近く雰囲気が良かった。面談は川崎先生で、ユーモアを交えて話してくれ緊張もほぐれました」(寺田さん)
 転入初日の放課後、同じ電車に乗るクラスメートから「一緒に帰ろう」と話し掛けられ友達に。そこからさらに友達の輪が広がっていった。
友達に誘われて生徒会の執行役員に立候補。会長や副会長と話しあいながら、コロナ禍でもできる安全で楽しい企画を考えている。

同じ総合進学コース3年の瀬戸山さんは、高校1年の10月に転入した。中学生のときに起立性調節障害に罹り、別の通信制高校へ進学。

「体調が良くなってきたので、もうちょっとしっかり勉強したいと思うようになりました。クラーク国際は全日型があり、毎日6時間授業を受けられるのがよかった。不安もありましたが、体調が悪い時は無理をしなくてもいいという雰囲気もあって、気持ちが楽でしたね」
クラーク国際に転入して一番うれしかったのは、友達ができたことだという。

「以前は、家族以外の誰とも話しをない日がありましたが、クラーク国際では向こうから話し掛けてくれた。友達と『今日はこんなことがあったよ』と、何気ない会話を交わすのがすごくうれしかった。勉強熱心な友達は、よく先生に質問をしていましたね。私は先生に質問するという発想がなかったのですが、影響されてわからないところを聞くようになりました」

写真左から寺田さん、川崎先生、瀬戸山さん。

クラーク国際は未来に繋がる学校

瀨戸山さんは卒業後、東京の大学に進学し経済を学ぶ。
「東京で経済学をしっかり勉強して鹿児島に帰り、地元に貢献できるようなお店を経営してみたいですね」(瀨戸山さん)

寺田さんも大学の環境科学分野への進学を考えている。
「田舎に住んでいたので、小さい頃はずっと海や山で遊んでいました。今は海洋汚染など自然破壊が問題になっている。環境についてしっかり学んで自然を守りたい」(寺田さん)

豊岡キャンパスの安田先生は言う。
「高校を卒業した後、生徒には長い人生が待っています。クラーク国際に来たあと、次のステップに前向きに踏み出せるように繋いでいく。それが我々の役目だと思っています」

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